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03 森林共生住宅への手引き
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快適な体感温度を維持する「土間床式」

問題が山積、 現代木造住宅の床下空間

木造住宅の場合、床の下にはいわゆる床下空間があります。室内とも室外ともいえるこの独特な空間は、一昔前まで多湿な日本の夏から住宅を守る伝統工法として知られ、高床で風が通るすがすがしい床下は理想とされていました。

ところがある時期から、建物の耐震性を担保するためといって新しい工法に置き換わりました。床下の外周をコンクリートで塞ぐ、いわゆる「布基礎」が廻るようになると、日本の木造住宅から「風の通るすがすがしい床下」は消えて行きます。先人の知恵を無視した近代工法は当然気候風土とはマッチせず、結果として現代の木造住宅の足回りには耐震、腐朽、シロアリ、断熱気密性能など問題が山積しています。

土間床形式で、大地の安定した熱を利用するアースハウジング

森林共生住宅では、問題の多い現代の床下はもはや必要ではないと考え、床と地面を一体化させた「土間床形式」を提案しています。土間床といっても土足で上がるわけではなく、仕上げは自由です。固い床が嫌ならその上を板張りにしてもいいし畳を敷いてもかまいません。素足で気持ちよいと感じていただける仕上げをおすすめしています。

住宅の足回りを土間床形式にすることで、家の基礎、作り方そのものが大きく変わります。しかし、最も有益な効果が得られるのは住居内の熱環境です。地盤接地型の土間床を採用することで、地盤から年間を通じて安定した大きな熱容量を室内に取り込むことが出来ます。建物の下の地盤は安定した熱の塊ですから夏は室内の熱を吸収し洞窟にいるようなひんやり感が味わえます。逆に冬には適度に加えた熱を蓄えて建物自体の基本体温を作ってくれるのです。

「森林共生住宅」では、大地とのコンタクトをしっかりとって、地球の体温を建物に伝え一体環境を作り出す工法を、アースハウジングと呼んでいます。

温度環境は個体温の熱容量で考える

人は100ワット程度の電球と同じくらいの発熱体で、体全体から1秒間に100ジュール程度の熱を発散して周囲に熱を配っています。人がまわりに熱を配るスピードは、周囲の環境に影響を受けやすく、周りの壁の温度が高ければ人体の排熱が妨げられるから熱く感じるし、冷たければ周りに熱を取られ人体の排熱スピードが速まって寒く感じるのです。

人体は熱を空気中に捨てるより周りの個体(壁、床、天井)に取られる熱が多い点に注目してください。自分が発熱体となって周りの壁の温度を上げていると考えれば分かりやすいかもしれません。このように、建物躯体の体温と人体の放射熱が直接やりとりされる状況を輻射熱環境といいます。人と建築躯体と、熱容量を持った個体同士で直接伝え合う熱というのは、空気を媒体にするよりも使い勝手がよいのです。

 

エネルギー非効率な空気の冷暖房

空気は分子密度が小さいので熱を伝える媒体としては非効率です。体感温度に影響するのは密度の大きい周辺個体の温度、すなわち住宅の床や壁が発する輻射熱だからです。

体感温度は壁の温度と空気温度(気温)の平均だと言われます。熱容量の大きな壁や床が20度なら中の気温を20度に調整することは瞬時にできますが、その逆はより多くのエネルギーが必要です。例えば躯体が10度であれば、体感温度を20度にするために気温を30度にしなければなりません。気温は10度であっても、躯体が10度ですから、温度の低い壁面の近くでは体から熱がどんどん取られるという状況になります。多くの現代住宅はこうしたアンバランスな熱環境にあり、その温度差は人の健康を害し、壁内結露を生み出し、さらには無駄な化石エネルギーの消費を生みだすという諸悪の根源ともなっているのです。

建物躯体が適切な体温(人体からの熱放射速度に見合った温度)を持てば、中に住む人はどの部屋にいても肌が感じる温度との温度差がなく快適にすごすことができます。エアコンで部分的に温めたり冷やされたりした空気熱の対流環境で過ごすよりも、ずっとエネルギー効率がよく、過ごしやすいことはまだあまり知られていません。

 

湿度の問題は熱で解決できる

ご存知のように、日本の住宅にとって湿度は長い間の課題です。湿度の正体は水蒸気ですが、水蒸気も多い場所から少ない場所に流れます。除湿機は閉じられた空間しか除湿することがきないので、空気の流動性が高い住宅ではあまり効果的ではありません。除湿機をかけても他所から水蒸気は流入してしまい、除いても除いてもキリがないということになります。

湿気は冷やされると結露し、建築や住人に大きな害を及ぼします。カビの発生や腐れ、細菌繁殖と室内衛生環境を著しく阻害するので、侵入する湿気を食い止めようと様々な高気密材が開発されていますが、森林共生住宅では、調湿作用のある自然素材を起用することで、ある程度の湿度を透しています。多湿な日本で生きてきた私たちの肌は乾燥に弱いので、気密性を高めて過乾燥状態を招きたくないからです。

湿気のたまりやすい浴室などの水回りは、日中の太陽熱を入れて解決することができます。水回りの位置が何らかの要因によって制約される場合には、躯体の蓄熱装置を使って少しだけ熱を加えることも有効な方法です。このように柔軟な温度管理を実現するためには、建築躯体に安定した熱容量をもたせることが必須であり、湿度の問題を解決するためにも、アースハウジング工法を採用しています。

 

最新の高断熱技術を組み合わせる

近年は断熱材の技術が進化していて、屋根などから降りてくる過酷な暖気・冷気をしっかり断熱することができるようになりました。これは住宅の快適性を保つために大変効果的です。森林環境建築研究所では、最新の高断熱技術の優位性を十分に活かして、外気温の影響を最小限に抑え、土間床式の地熱利用と組み合わせることで、住宅内の心地よい輻射熱環境をつくります。

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ショールームを兼ねた本社「月舞台」では、輻射熱環境の心地よさを体験していただける、体験セミナー会を行っています。興味のある方は、ぜひお問い合わせ下さい。

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